『日本酒』のウンチク

純米酒、吟醸酒、本醸造酒、大吟醸酒って?
平成4(1992)年施行の酒税法上の分類方法による呼称です。日本酒は普通酒(75%)と特定名称酒(25%)に分かれています。あなたのお気に入りの日本酒は、一体どのタイプに属しているのだろう。酒税法上の分類や出荷方法による分類を知っておくのも良いのでは!

酒税法上の分類
普通酒
使用する酒米は3等級以下、精米歩合は70%以上、糖類、調味料等を使用し、20〜40%のアルコールを添加したり三増酒をブレンドしたりして造られています。

米以外の原料で造られたアルコールを添加したものを、表示上アルコール添加物といいます。この醸造アルコールの添加の歴史は、元禄時代に焼酎(はしら焼酎と呼ばれていた)を清酒に加えて火持ち(ひもち)を良くする事から始まりました。日本酒に害を与える菌を火落菌(ひおちきん:乳酸菌の一種)といいます。この菌を押さえるために焼酎を添加したようです。

その後、戦時中や戦後に起きた米不足で、日本酒の製造が困難になり、日本酒による税収入が減りました。そこで日本酒の製造量の減少を解消する為にアルコール添加の研究・実験がされ、アルコール添加が広く蔵元で行なわれるようになったのです。

その時に、「三倍増醸」と呼ばれる製造法が生まれました。当時はお酒も貴重でしたので、アルコールをたくさんモロミに入れ、アルコールで薄まった分の味をグルタミンソーダ(味の素のようなもの)やブドウ糖、調味料、酸味料を添加してお酒の味を補っていました。
アルコール添加酒 三倍増醸ブレンド酒
【原料】
米、米麹、醸造アルコール

本醸造に比べ、
アルコール使用量が多い
【原料】
米、米麹、醸造アルコール、糖類、酸味料

合成清酒」と共に日本酒の評判を落とした元凶である「三倍増醸酒」が使用されているお酒です。三倍増醸酒だけではとても飲めないので、糖類、調味料、酸味料を加えて味を整えます。さすがに、この 「三倍増醸酒」だけを商品として出荷している蔵元は無く、左記の「アルコール添加酒」とブレンドして、大量に安価で商品化し、「2級酒」の代名詞(小さな蔵元の酒等の2級酒とは違いますよ!)になってしまいました。これらの製造法は、法律的に何ら違法ではありませんが、「本醸造」には、この「三倍増醸酒」を混入してはいけないことになっています。

見分け方は、ラベルをよく見るしかありません。パック酒など安い酒のラベルを見ると、成分が書いてありますが、「醸造アルコール」以外に添加物(糖類、醸造用糖類とか)と書いてある酒は、この「三倍増醸酒」が混入されています。
特定名称酒
使用する酒米は1〜3等級のみで、酒税法では特定名称酒は精米歩合とアルコールの添加の有無で8つに分類されています。なお日本酒の消費割合では純米酒は10%程度です。残念ですが、醸造アルコールを使用した普通酒や本醸造系が90%を占めていることになります。
精米歩合 本醸造系 純米系
【原料】
米、米麹、醸造アルコール
【原料】
米、米麹
70%以下 本醸造酒 純米酒 ※H16から精米歩合要件削除
60%以下 特別本醸造酒 特別純米酒
60%以下 吟醸酒 純米吟醸酒
50%以下 大吟醸酒 純米大吟醸酒
【精米歩合】
日本酒に使用される米は、必ず精米をします。この精米の割合を表したのが 『精米歩合』です。精米歩合の%の値が小さいほど、米の表層にある雑味の元となる部分を多く削り取っている事になります。米は中心に近いほど、澱粉(デンプン)質が多くなります。この中心部の米で、清酒を仕込むときれいでなめらかな味になります。ただしその分コストも高くなります。
特定名称酒は醸造アルコールを加えるか加えないかで、本醸造系と純米系とに分けられます。醸造アルコールの添加というと、マイナスイメージを持つ向きもありますが、必ずしもそうではありません。普通酒の場合とは違い、その規制は厳しく、使用できる醸造用アルコール(でんぷん質物や含糖質物から醸造されたアルコール)は、白米の重量の10%以下になっています。その添加目的も、もろみにこの醸造用アルコールを適量添加する事で、香りを引き出し、バランスを高める、つまり酒質の淡麗化、香味を劣化させる乳酸菌(火落菌)の増殖を防止する効果、つまり酒の防腐効果を得る為だとか...あるようです。

出荷方法による分類(特別な方法でビン詰めした酒の代表的なもの):貴重なため、限定または少量生産になるものが多い。
にごり酒 (火入れ・本生あり)
もろみを目の粗い布でこしただけの白く濁っている白濁酒の事。出荷のときに加熱、殺菌していないもので、酵素が活性化しているので活性酒ともいい、酵母や酵素が生きている。多くは発酵中の酸のような炭酸ガスを含んだにごり酒で、口に含むとぱちぱちとした心地よい刺激がある。火入れタイプは濃さが様々にあり、特に、本生のほうが香りが華やか。見た目は「おり酒」とほぼ同じですが、にごり酒はもろみ(お酒を搾る前)を目の荒い網でこした物なので、網の目によって、どろっと重たいものから軽いタイプのものまで色々有る。
おり酒 (火入れ・本生あり)
見た目は「にごり酒」とほぼ同じだが、製法が異なる。もろみを目の細かい布で丁寧にこしてもどうしても微細な麹と酵母等が混ざり、タンクの底にわずかに「おり」(にごり)が溜まります。これを集めて白く濁ったままにしておいたのが「おり酒」。
ささにごり・うすにごり (火入れ・本生あり)
もろみを軽く濾して“薄にごり”でビン詰めしたものや、澱の部分をあとで軽く調合したものなど。生のまま発酵時の炭酸ガスを残した“活性にごり”でビン詰めしたものが多い。米粒の粒子や酵母がそのまま残っているので爽快感があり特に、本生のほうが香りが華やか。
酒槽しぼり (火入れ・本生あり)
伝統的な日本酒の製法では、酒袋に入れたもろみを「槽(ふね)」または「酒槽(さかぶね)」と呼ばれる、船の平底に似ている、木製の細長い箱に入れ、もろみを酒袋に入れ酒槽の中に積み重ね加圧して搾る。酒槽は古来、木製だったが、ステンレスやコンクリート製のものもある。最近は自動もろみ圧搾機が多く使われ、酒槽は貴重なものとなっている。
しずく酒・袋吊り (火入れ・本生あり)
出来立てのお酒、もろみを詰めた布袋(酒袋)を竿に吊り、その袋から自然に滴り落ちる「雫」(しずく)のお酒。もろみ内部の粒子を押しつぶさず、液化発酵したところのみが得られ、大変きめ細かな香りの良い酒となる。手間と時間がかかるもので、量的にも貴重な酒である。
新走・荒走(あらばしり) (火入れ・本生あり)
酒槽に酒袋を積み重ねていき、圧力を加える前にもろみの圧力のみで自然に流れ出した酒のこと。少し白濁し、炭酸ガスが残っていることから、ほどよい酸味があって、搾ったそのままが新鮮に香りよく味わえます。搾り全体量に占める割合が少なく、少量出荷となる。
中垂れ(なかだれ) (火入れ・本生あり)
「あらばしり」 の後から「責め」までの酒質の部分。品質がよい。
中汲み(なかぐみ)・中取り(なかどり) (火入れ・本生あり)
搾った酒をしばらく放置しておくと、次第に容器の底に澱が沈殿する。タンクの中間、つまりもろみの一番良い、味香のバランスの良い部分を汲み取った酒。
原酒 (火入れ・本生あり)
搾ってからアルコール度を調整していないままのお酒。つまり、加水調整をせずにもろみを搾り、ビン詰めしたお酒で、華やかな濃厚さと、深い味わいが魅力。一般的な日本酒のアルコール度は15〜16%になっている。このくらいが一番飲みやすいとされているからだと言われているからだが、アルコール度を調整していない原酒は、16〜20%の間にほとんど当てはまる。
無濾過酒 (火入れ・本生あり)
濾過(粉末の活性炭を入れて余分な雑味や色を吸着させる)をしていない酒。つまり、自然に生成された成分がそのままビン詰めされている。酒本来の淡い琥珀色の色合い、旨味とコクがあり、奥行きに深みが加わる。香りとコクを存分に楽しめる。最近は「無濾過生原酒」という種類がたくさん販売されている。

本生酒 (火入れなし)
本生酒 (火入れなし):ラベル表示:本生酒
搾ったお酒を一切火入れ(加熱殺菌)せずに瓶詰し出荷するお酒。含まれる酵素類は生きたままの完全な生ものなので、管理を徹底しないといけない。蔵によっては、本生酒を出荷しないところもあり、限定出荷が多い。火入れ酒にくらべ、抜群によい香りと喉ごし、味わいを楽しめる。一般に、「ワインのような日本酒」とか表現されやすく、発酵モロミの香りが新鮮な味わいをもつ。

火入れ酒
生貯蔵酒(生表示だが本生ではない):ラベル表示:生貯蔵酒
本生で貯蔵し、出荷するために瓶詰めする際、火入れ(加熱殺菌)する。生熟成した香味を持ちながらも、本生酒よりも日持ちがいい。ただ生酒特有の買ってからのお酒の変化はあまり楽しめない。
生詰酒(生表示だが本生ではない):ラベル表示:生詰酒
貯蔵・熟成前に火入れ(加熱殺菌)し、出荷するために瓶詰めする際は、火入れしない。蔵の中で経た熟成味を損なうことなく味わうことが出来る。特に吟醸酒などの場合、火入れの回数が少なくしかも早い時期の1回だけなので、吟醸香など特有の香味を比較的維持したまま出荷できる。ただ瓶詰時に殺菌していないので、そのまま常温に放置すると劣化してしまう危険がある。
火入れ酒:ラベル表示:とくになし
貯蔵前に火入れ(加熱殺菌)し、瓶詰め時にも火入れする。

その他
古酒・長期熟成酒 (火入れ・本生あり):ラベル表示:古酒・長期熟成酒
一般に長期間貯蔵し、熟成させた酒を「古酒」「長期熟成酒」と呼ぶ。なお、古酒を製造するメーカーの組織「長期熟成酒研究会」では「満3年以上蔵元で熟成させた、増醸酒を除く清酒」を「長期熟成酒」としているそうだ。日本酒は貯蔵を経るほど香味と色が変化するので、10年物ともなると、淡黄色から褐色へと着色度を増して、新酒にはない複雑で多様な香味となる。貯蔵方法には、常温熟成、氷温熟成などの方法があり、氷温のほうがすっきりとしたものが多い。酒が枯れるとも言い、角が取れ、すっきりした落ち着きをそなえる。とろりとした触感を持つものもある。
【古酒のタイプ分類】
長期熟成酒研究会では、もとの酒の特徴と熟成の方法により次の三タイプに分けています。
・淡熟タイプ:淡麗な吟醸酒などをおだやかに熟成させたもので、もとの酒の特徴を残した、香味がやわらかくきれいな酒。
・濃熟タイプ:熟成により大きく変化する酒で、純米酒や本醸造酒など比較的精米歩合の高い米で醸造し、常温で貯蔵した濃醇な酒。
・中間タイプ:貯蔵の前半・後半で淡熟、濃熟の両タイプの熟成方法を使い分けたもの。
(トキノシズク 〜時の雫〜 大吟醸:真名鶴酒造):4〜13年の各熟成酒が揃っている
古々酒・完熟酒・秘蔵酒など (火入れ・本生あり):ラベル表示:古々酒・完熟酒・秘蔵酒 など
古酒や長期熟成酒の他の呼び方。5年以上熟成させると「秘蔵酒」と呼ばれるものもある。
(千代酒造  10年熟成 秘蔵酒 本醸造  :西の京地酒処きとら)

※現在、日本酒の新酒、古酒、大古酒などの名称についての明確な規定はありません。一般的には、税法上で定められた酒造年度を基準にして呼ばれることが多いようです。酒造年度とは、7/1〜翌6/30までの一年間をいい、その酒造年度中につくられた酒で、年度末の6/30までの間に出荷されるものを「新酒」といい、翌酒造年度の7/1以降1年間に出荷されるものを「古酒」、さらに1年以上を経過したものを「大古酒」と呼びます。上記の名称の意味とは異なります。



日本酒度とは
水(±0)に対する清酒の比重を「日本酒度計」で計ったものです。清酒中のエキス分(糖分など)の量の多少を表わします。日本酒の甘口.辛口をみる目安となります。糖分が多ければ甘く感じ、糖分が少なければ辛く感じます。日本酒度は糖分の多い物がマイナスに、逆に糖分の少ない物がプラスとなります。つまり、マイナスの度合いが高いほど甘口となり、プラスの度合いが高いほど辛口という事になります。


日本酒度表

+6.0
以上
+3.5〜
+5.9
+1.5〜
+3.4
−1.4〜
+1.4
−1.5〜
−3.4
−3.5〜
−5.9
−6.0
以上
大辛口
辛口
やや辛口
普通
やや甘口
甘口
大甘口



酸度とは
「酸度」は酒中の有機酸(乳酸、コハク酸、リンゴ酸など)の量を表しています。有機酸は、酒の味に酸味、旨味をもたらします。10mlのお酒を中和するのに要する、水酸化ナトリウム溶液のmlを指しています。大雑把な分け方ですが、1.5を境にして以下が淡麗型、以上が濃醇型といったところです。製法によっても平均値は異なり、吟醸酒は低め、純米酒や生もと・山廃系は高めとなります。日本酒度が同じ場合、この酸度が高い方が辛く、味は濃く感じられます。


アミノ酸度とは
「アミノ酸度」として測定される成分は、主にごく味やうま味を構成します。日本酒にはアルギニン、チロシン、セリン、ロイシン、グルタミン酸など約20種類のアミノ酸が含まれています。 一般的にアミノ酸度が少ないと淡麗に、多いと濃醇な味になります。


地酒マイスターについて
11の地酒蔵元が、共同でラベルデザインを企画して、各地酒の製造に関するあらゆる情報を詰め込んでしまおうというもの。情報開示することによって責任醸造を明らかにしています。各蔵元自慢の逸品が揃っており、500nlと720mlがあり、値段も手頃。

[宮城県]地酒マイスター 純米大吟醸 伏見男山 1700円 (株)男山本店
[山形県]地酒マイスター 玄吟醸 無濾過 霊峰月山 1500円 亀の井酒造(株)
[秋田県]地酒マイスター 寒仕込中吟純米 雪の音 1600円 阿桜酒造(株)
[新潟県]地酒マイスター 純米吟醸 郷越後 1000円 お福酒造(株)
[福井県]地酒マイスター 純米吟醸生貯 越の磯 980円 (株)越の磯
[岐阜県]地酒マイスター 純米大吟醸 酒道楽 1800円 玉泉堂酒造(株)
[三重県]地酒マイスター 吟醸 初日 1500円 (株)油正
[滋賀県]地酒マイスター 吟醸 比叡の寒梅 1600円 藤本酒造(株)
[岐阜県]地酒マイスター 純米吟醸 吟雪花 1500円 (株)三輪酒造
[京都府]地酒マイスター 純米大吟醸 富乃司 1000円 (株)北川本家

(地酒マイスター(責任醸造):日本銘醸会地酒屋)

※いつのまにか180ml瓶がラインナップされ、蔵数も増えている。さらに「地酒上等酒」シリーズが登場している。
  (詳細は日本生粋地酒生産者協議会の公式HP参照)

[宮城県] 地酒上等酒 伏見男山 (株)男山本店 詳細はこちら
[新潟県] 地酒上等酒 越後お福正宗 お福酒造(株) 詳細はこちら
[長野県] 地酒上等酒 麗人 銀華 麗人酒造(株) 詳細はこちら
[福井県] 地酒上等酒 春夏秋雪 越前 (株)越の磯 詳細はこちら
[滋賀県] 地酒上等酒 新開 藤本酒造(株) 詳細はこちら
[島根県] 地酒上等酒 都錦 都錦酒造(株)
[香川県] 地酒上等酒 川鶴 福づつみ 川鶴酒造(株)
地酒上等酒 讃岐 川鶴 詳細はこちら
(地酒上等酒 150ml:日本銘醸会地酒屋)
(地酒ショットバー 150ml:日本銘醸会地酒屋)



日本酒用語

【原料米】 原料米は品種ごとに特性があり、各蔵元はその特性を熟知し、その特性にあった酒造りをしています。
【仕込単位】 仕込単位とは、一つの仕込みに使用する全てのお米の重量によって表します。一般的な数値ですが、小さい仕込みで1000kg以下。大きな仕込みでは、2000kg以上を、一つの仕込みに使用します。仕込単位が小さいほど、醪(もろみ)の 管理がしやすいので、良い酒が造りやすくなります。
【仕込水】 昔から『銘酒は良い水から生まれる』と言われるくらい、酒造りにとって、水は、大切なものです。また、醸造用水は、水道水の水質基準より厳しく、一般的に水道水や井戸水を活性炭等で濾過してから使用します。処理された水は、天然の湧水の様に、すっきりとしたものになります。
【蒸方法】 良い蒸米はうまい酒を造る為の第一歩です。可能な限り、均一に蒸す事で、さばけの良い蒸米(一粒一粒があまりくっつかない蒸米)にすると、この後の酒造作業がスムーズになります。
【麹造り】 麹つくりは酒造工程の中で最も重要な作業です。麹とは、カビ類を繁殖させたものをいい、清酒醸造に用いる麹は、蒸米に黄麹菌(きこうじきん)を繁殖させた米麹(こめこうじ)です。一般的に、蓋(ふた)麹は、幅30cm・長さ50cm程度の木枠を使用し、主に少量 の仕込みで特に乾いた麹を造るのに用います。
【箱】 麹は、幅60cm、長さ1m程度の木枠を使用し、主に1000〜2000kg程度の仕込みの際に使用します。
【床】 麹は、幅1.5m、長さ5m程度の木の台に木枠をつけ、その中で麹を育て ます。主に2000kg以上の仕込みの際に使用します。
【酒母】 醪(もろみ)の醗酵の元になる酵母を培養したもので、モトとも言います。生モト(きもと)、山廃モト(やまはいもと)、速醸モト(そくじょうもと) の3種類に大別され、一般的に、速醸モトは淡麗タイプ。生モト 、山廃モトは濃醇タイプになります。(山廃モトは、生モトの作業を一つ廃止しただけ なので、系統的には同じものです。正式には、山卸廃止モトといいます) 醪(もろみ)日数 なめらかな味の清酒を造る為には蒸し米を少しずつ溶かしていくのがポイントです。このために温度を低くして、ゆっくり醗酵させます。ゆっくり醗酵させる事によって、醪日数は長くなります。一般酒で20日前後。吟醸酒だと25日以上かかります。
【濾過】 清酒の余分な味や香りを取り除き、味をすっきりさせる為に行いますが、高品質で欠点の無いものは無濾過で出荷される場合があります。
【火入れ】 清酒を加熱殺菌する為の作業で、通常は過熱してタンクで貯蔵されますが、少量で高品質のものは瓶詰めしてから加熱殺菌します。
【貯蔵方法】 通常は常温で貯蔵し、味を熟成させてから出荷しますが、できの良い酒や、しぼりたてのフレッシュな感じを残したい酒は、これ以上味や香りを変化させないようにする為、低温で貯蔵させる場合があります。
【酒造年度】 酒造りの世界では、毎年7月から翌6月までを1年とします。H13BYは、平成13酒造年度に出来たお酒、という事です。通常は前年度製造した清酒を出荷します。
【酵母】 清酒業界では酵母の品種改良が進んで、国や県の研究機関、大手メーカーなど で開発が進み、徐々に実用化されつつあり、香りの良いものや、ワイン風の清 酒が市販されはじめています。特に品評会などでは、香りが高い酵母で作られた清酒が上位入賞をはたすようになってきました。
【鑑評会】 鑑評会は毎年、期間内に製造された清酒の品質を鑑評することで品質と技術の現状を把握し、さらに優れた清酒の製造に寄与することを目的に開催されており、各地の国税局が主催するものと、酒類総合研究所主催の新酒鑑評会(全国規模で公的機関が主催するものでは唯一)とがあります。神奈川県が参加できる「関東信越国税局・酒類鑑評会」は平成11年までは春と秋の年2回行われていましたが、平成12年は春1回のみ開催。平成13年は春・秋2回。平成14年からは、秋の1回だけの開催です。また、年1回開催されている「全国新酒鑑評会」は、2001年度より国税局醸造研究所が行政特殊法人化され、独立行政法人・酒類総合研究所の主催に変更になりました。


合成清酒について

酒税法上の分類方法が生まれるまでの歴史を先に説明しておきます。

【日本酒制度の変遷】
戦前の日本ではとても良いお酒が各地でたくさん作られていました。農家でも自家製のお酒・どぶろくを作っていました。昭和13年に酒の小売免許制度、つまり酒屋の免許制度が出来、昭和18年には日本酒の級別制度が出来ました。

あの特級、一級、二級酒です。

当時、1升ビンに付き、特級の税金は800円、一級は400円、二級は200円でした。しかし、戦後、食糧事情が悪くなり、酒造好適米が出来ず、需要に追いつく為、税収の為にイモ類などから取れるアルコールを添加し、調味料等で味付けして 造られた合成酒、三倍増醸酒(三増酒)が主流になっていきました。(アルコールの添加量は一升瓶あたり約60〜65%)日本酒の悪しき時代です。

そして級別制度にも多くの問題が発生しました。酒類審議会委員会に提出して、特級,一級,二級を審査してもらっていたのですが 、戦後、醸造量の増加と共に、国税局は、一級だけでは税収にならないため酒類審議会委員会を無視して 蔵元との話し合いで同じ酒の入った別々のタンクの酒に特級と一級のラベルを付けたのです。その結果、特級酒、一級酒のラベルは、多額の税金を払える大手酒造メーカーが独占し、小さな蔵元の酒や地方酒等は二級酒になっていったのです。

昭和48(1973)年、酒税法と大手酒造メーカーに反発した宮城県の松山町の4つの一級酒を造っていた、小さな蔵元(浅見商店、勝来酒造、桜井酒造店、松本酒造店)が、合同で1つのお酒を作りました。 それが翌年販売開始された、現在も販売されている「一の蔵・無鑑査」です。税金は2級の税金を払っていましたが、ラベルを貼らずに無鑑査として発売したのです。その後、50年代には、2級の税金を払い吟醸酒、本醸造酒も作っています。

このようなことがきっかけとなり、平成4(1992)年、新しい酒税法が生まれたのです。 

【合成清酒とは】
酒税法では「清酒に類似するもの」と規定されており、清酒とは異なります。合成清酒は、アルコールまたは焼酎に、「香味液」と称する清酒や、糖類、有機酸類、アミノ酸類などの調味料、食塩、グリセリン、色素などさまざまな物を混合して製造した酒です。 添加できる原料は、天然物に由来する物質と食品添加物として認められている物質に限られます。清酒のもろみや酒粕、大豆蛋白質を分解して発酵させた液(KCP)など醸造物を混ぜて仕込んだり、砕米、白糠などを混合して、発酵させたりすることも行われています。 

誕生は最もな理由があるし、現在も価格面などから根強いファンがいます。激安店では、清酒1升1000円弱のところ、合成清酒はその半額程度で買えてしまうのです。

しかし科学(化学?)から生まれた合成清酒は、清酒とは違いますし、米不足や戦争がなければ今に伝わるお酒にはならなかったと思っています。しかし、醸造技術発展への功績もあり、また合成清酒から大手に育った酒造メーカーも多々あります。

ではその歴史を説明したいと思います。
【混成酒と代用清酒】
明治24(1891)年、日本ではまだ造られていなかったアルコールが西欧から輸入されるようになり、このアルコールを調味料とともに清酒に添加した「混成酒」が造られていました。その後、大正にかけて、国内で甘藷や馬鈴薯など米以外の安価な原料を使ってアルコールの生産が開始され、これを混ぜた「代用清酒」や「改良清酒」も製造されましたが、酒税が高く、アルコールの輸入関税も引き上げられたため、長続きはしませんでした。 
【合成清酒=理研酒 の誕生】
戦前の日本には、自国開発の技術を活かして相次いで誕生した企業群がありました。最盛期の1939年に63社を数えた「理研産業団」がそれです。

1918年に富山県から全国に波及した米騒動が開発のルーツだったようです。ビタミンB1の発見者として世界的に著名な故・鈴木梅太郎氏は、この事態に衝撃を受け、米不足を解消するには、当時、年間400万トンもの米を消費していた清酒の原料を米以外のものに切り換えるべきだと考えました。財団法人理化学研究所(1917年発足)第3代所長の大河内正敏氏も人口・食糧問題解決につながるものだとして、この開発・企業化を全面的にバックアップしたのです。

鈴木研究室の加藤正二氏らに指示して大正8(1919)年頃から合成清酒の研究に取りかかり、ブドウ糖の溶液にアラニンというアミノ酸を加え、酵母で発酵させると清酒のような芳香がすることを発見し、これにアルコール、調味料などを加え、清酒に似た飲料を完成させ、大正11(1922)年、この方法に特許がとられました。 その後、清酒中の成分を詳しく調べ、それらの成分を配合して、香り、味、色が清酒に似たものを造り出すという研究方針に変更され、これが現在の合成清酒の原型となりました。この合成酒は、理研が開発したというので「理研酒」と呼ばれ、大正12(1923)年には工場規模で製造されるようになったのです。様々な製造技術の開発が行われ、合成清酒の企業化も進んだのです。
【合成清酒の企業化】
理研酒の中間工場試験が1920年から静岡県大仁にある東洋醸造(後の旭化成→合同酒精)で開始されました。これに続いて大河内正敏氏は1921年、三共製薬の塩原又策氏、大日本醸造(清酒「白雪」の醸造元(現・小西酒造)が1920年に設立)の小西新右衛門氏と共同出資で、「大和醸造試験所」を設立、藤沢(神奈川県)で理研酒の試醸を進めました。

1923年には大日本醸造と大和醸造試験所が合併してスタートした「大和醸造」が、理研から理研酒の特許実施権を取得、「新進」のブランドで合成酒を販売しました。

しかし、このことが理研酒の普及・企業化の進展を阻害する要因ともなってしまいました。「理研自身が特許実施権を持たなければ理研酒の普及は困難だ」との大河内氏の考えもあって、特許実施許諾料の25%を大和に支払うことを条件として、1935年に特許実施権が理研の手に戻されました。 

腐りにくく、二日酔いもせず、年に何回でも仕込みが可能で、従来の酒造設備がそのまま活用でき、しかも安いなどというメリットからか、全国各地の酒造会社で生産されました。1936年に理研が実施権の供与を始めてから、わずか7年後の43年には、植民地や占領地も含めて47社52工場で生産されるようになったのです。

この中には、大和醸造を吸収した三楽酒造(現・メルシャン)をはじめ、合同酒精や、戦後に協和発酵工業に吸収される兵庫県酒類などが含まれていました。また、理研自らの手による企業化も進められました。大河内氏は、1927年に理研の構内に理研酒のパイロット・プラントを作り、自らが会長となって同年設立した「理化学興業」を通じて、翌1928年から「利久」のブランドで発売しました。「国利栄久」、「利休」、「リキュール」などにひっかけて命名されたといいます。

利久の人気が高まるにつれ、「公益法人の理研が民業を圧迫している」との批判も出てきたため、1933年、理化学興業が生産・販売を一手に担当することになりました。1938年には、加藤正二氏を社長とする「理研酒工業」が設立され、理化学興業の合成酒部門を引き継ぎました。軍の監督工場に指定され、理研産業団の各社と同様、急速に戦時体制に組み込まれていきました。

戦後の1950年になって、理研発酵は「利久発酵工業」と改称され、イメージアップを図ろうとしましたが、合成酒業界の競争激化の中で経営が悪化、1955年には協和発酵工業に吸収合併されました。
【現在の合成清酒事情】
理研酒は今なお健在です。協和発酵は「利久」ブランドをそのまま残すとともに、他の銘柄も合わせて、年間7000klの合成酒を生産・販売しています。最大手の合同酒精、2位のメルシャンはもとより、東洋醸造を吸収した3位の旭化成工業(現・合同酒精)など各社も理研酒の流れを汲んでいます。

戦後の合成酒の年間需要は、1960年の13万7000klをピークとして、1975〜1991年まで2万kl台に低迷していましたが、バブル崩壊後、年々需要が回復しています。1996年以降は5万kl台にまでに回復しています。店頭の実勢価格で、通常の清酒に比べて3〜5割も安いうえ、淡麗でクセがない味が受けているようです。また調理用としても根強い需要があるようです。
(元禄美人:合同)
(富久桜:メルシャン)
(酒党萬来)
【神奈川県でも合成清酒が作られていた!】
財団法人理化学研究所の大河内正敏氏は1921年、三共製薬の塩原又策氏、大日本醸造(清酒「白雪」の醸造元(現・小西酒造)が1920年に設立)の小西新右衛門氏と共同出資で、「大和醸造試験所」を設立、藤沢(神奈川県)で理研酒の試醸を進めました。大正12(1923)年には大日本醸造と大和醸造試験所が合併してスタートした「大和醸造」が、理研から理研酒の特許実施権を取得、「新進」のブランドで合成酒を販売しました。理化学研究所が開発した「理研酒」の特許を1935(昭和10)年まで専有していました。

草創期の合成清酒の1つである「新進」は、当初は高級品扱いされましたが、やがて安価な酒として各地へ出荷され、特に昭和初期には全国的に有名だったそうです。

「新進」の主な原料はさつまいもで、当時、辻堂周辺がさつまいもの一大生産地だったそうです。食糧には向かないものが大和醸造の工場へ運び込まれ、合成清酒の原料にされたのです。

この会社は、1961年に三楽酒造(現・メルシャン)が吸収合併しており、今も藤沢市城南に工場(左記)があります。