『日本酒』のウンチク
純米酒、吟醸酒、本醸造酒、大吟醸酒って?
平成4(1992)年施行の酒税法上の分類方法による呼称です。日本酒は普通酒(75%)と特定名称酒(25%)に分かれています。あなたのお気に入りの日本酒は、一体どのタイプに属しているのだろう。酒税法上の分類や出荷方法による分類を知っておくのも良いのでは!
酒税法上の分類 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
日本酒度とは
水(±0)に対する清酒の比重を「日本酒度計」で計ったものです。清酒中のエキス分(糖分など)の量の多少を表わします。日本酒の甘口.辛口をみる目安となります。糖分が多ければ甘く感じ、糖分が少なければ辛く感じます。日本酒度は糖分の多い物がマイナスに、逆に糖分の少ない物がプラスとなります。つまり、マイナスの度合いが高いほど甘口となり、プラスの度合いが高いほど辛口という事になります。
日本酒度表
+6.0 以上 |
+3.5〜 +5.9 |
+1.5〜 +3.4 |
−1.4〜 +1.4 |
−1.5〜 −3.4 |
−3.5〜 −5.9 |
−6.0 以上 |
|
|
|
|
|
|
|
酸度とは
「酸度」は酒中の有機酸(乳酸、コハク酸、リンゴ酸など)の量を表しています。有機酸は、酒の味に酸味、旨味をもたらします。10mlのお酒を中和するのに要する、水酸化ナトリウム溶液のmlを指しています。大雑把な分け方ですが、1.5を境にして以下が淡麗型、以上が濃醇型といったところです。製法によっても平均値は異なり、吟醸酒は低め、純米酒や生もと・山廃系は高めとなります。日本酒度が同じ場合、この酸度が高い方が辛く、味は濃く感じられます。
アミノ酸度とは
「アミノ酸度」として測定される成分は、主にごく味やうま味を構成します。日本酒にはアルギニン、チロシン、セリン、ロイシン、グルタミン酸など約20種類のアミノ酸が含まれています。
一般的にアミノ酸度が少ないと淡麗に、多いと濃醇な味になります。
地酒マイスターについて
11の地酒蔵元が、共同でラベルデザインを企画して、各地酒の製造に関するあらゆる情報を詰め込んでしまおうというもの。情報開示することによって責任醸造を明らかにしています。各蔵元自慢の逸品が揃っており、500nlと720mlがあり、値段も手頃。
[宮城県]地酒マイスター 純米大吟醸 伏見男山 1700円 (株)男山本店
[山形県]地酒マイスター 玄吟醸 無濾過 霊峰月山 1500円 亀の井酒造(株)
[秋田県]地酒マイスター 寒仕込中吟純米 雪の音 1600円 阿桜酒造(株)
[新潟県]地酒マイスター 純米吟醸 郷越後 1000円 お福酒造(株)
[福井県]地酒マイスター 純米吟醸生貯 越の磯 980円 (株)越の磯
[岐阜県]地酒マイスター 純米大吟醸 酒道楽 1800円 玉泉堂酒造(株)
[三重県]地酒マイスター 吟醸 初日 1500円 (株)油正
[滋賀県]地酒マイスター 吟醸 比叡の寒梅 1600円 藤本酒造(株)
[岐阜県]地酒マイスター 純米吟醸 吟雪花 1500円 (株)三輪酒造
[京都府]地酒マイスター 純米大吟醸 富乃司 1000円 (株)北川本家
(地酒マイスター(責任醸造):日本銘醸会地酒屋)
※いつのまにか180ml瓶がラインナップされ、蔵数も増えている。さらに「地酒上等酒」シリーズが登場している。
(詳細は日本生粋地酒生産者協議会の公式HP参照)
[宮城県] | 地酒上等酒 伏見男山 | (株)男山本店 | 詳細はこちら | |
[新潟県] | 地酒上等酒 越後お福正宗 | お福酒造(株) | 詳細はこちら | |
[長野県] | 地酒上等酒 麗人 銀華 | 麗人酒造(株) | 詳細はこちら | |
[福井県] | 地酒上等酒 春夏秋雪 越前 | (株)越の磯 | 詳細はこちら | |
[滋賀県] | 地酒上等酒 新開 | 藤本酒造(株) | 詳細はこちら | |
[島根県] | 地酒上等酒 都錦 | 都錦酒造(株) | 未 | |
[香川県] | 地酒上等酒 川鶴 福づつみ | 川鶴酒造(株) | 未 | |
地酒上等酒 讃岐 川鶴 | 詳細はこちら | |||
(地酒上等酒 150ml:日本銘醸会地酒屋) (地酒ショットバー 150ml:日本銘醸会地酒屋) |
日本酒用語
【原料米】 | 原料米は品種ごとに特性があり、各蔵元はその特性を熟知し、その特性にあった酒造りをしています。 |
【仕込単位】 | 仕込単位とは、一つの仕込みに使用する全てのお米の重量によって表します。一般的な数値ですが、小さい仕込みで1000kg以下。大きな仕込みでは、2000kg以上を、一つの仕込みに使用します。仕込単位が小さいほど、醪(もろみ)の 管理がしやすいので、良い酒が造りやすくなります。 |
【仕込水】 | 昔から『銘酒は良い水から生まれる』と言われるくらい、酒造りにとって、水は、大切なものです。また、醸造用水は、水道水の水質基準より厳しく、一般的に水道水や井戸水を活性炭等で濾過してから使用します。処理された水は、天然の湧水の様に、すっきりとしたものになります。 |
【蒸方法】 | 良い蒸米はうまい酒を造る為の第一歩です。可能な限り、均一に蒸す事で、さばけの良い蒸米(一粒一粒があまりくっつかない蒸米)にすると、この後の酒造作業がスムーズになります。 |
【麹造り】 | 麹つくりは酒造工程の中で最も重要な作業です。麹とは、カビ類を繁殖させたものをいい、清酒醸造に用いる麹は、蒸米に黄麹菌(きこうじきん)を繁殖させた米麹(こめこうじ)です。一般的に、蓋(ふた)麹は、幅30cm・長さ50cm程度の木枠を使用し、主に少量 の仕込みで特に乾いた麹を造るのに用います。 |
【箱】 | 麹は、幅60cm、長さ1m程度の木枠を使用し、主に1000〜2000kg程度の仕込みの際に使用します。 |
【床】 | 麹は、幅1.5m、長さ5m程度の木の台に木枠をつけ、その中で麹を育て ます。主に2000kg以上の仕込みの際に使用します。 |
【酒母】 | 醪(もろみ)の醗酵の元になる酵母を培養したもので、モトとも言います。生モト(きもと)、山廃モト(やまはいもと)、速醸モト(そくじょうもと) の3種類に大別され、一般的に、速醸モトは淡麗タイプ。生モト 、山廃モトは濃醇タイプになります。(山廃モトは、生モトの作業を一つ廃止しただけ なので、系統的には同じものです。正式には、山卸廃止モトといいます) 醪(もろみ)日数 なめらかな味の清酒を造る為には蒸し米を少しずつ溶かしていくのがポイントです。このために温度を低くして、ゆっくり醗酵させます。ゆっくり醗酵させる事によって、醪日数は長くなります。一般酒で20日前後。吟醸酒だと25日以上かかります。 |
【濾過】 | 清酒の余分な味や香りを取り除き、味をすっきりさせる為に行いますが、高品質で欠点の無いものは無濾過で出荷される場合があります。 |
【火入れ】 | 清酒を加熱殺菌する為の作業で、通常は過熱してタンクで貯蔵されますが、少量で高品質のものは瓶詰めしてから加熱殺菌します。 |
【貯蔵方法】 | 通常は常温で貯蔵し、味を熟成させてから出荷しますが、できの良い酒や、しぼりたてのフレッシュな感じを残したい酒は、これ以上味や香りを変化させないようにする為、低温で貯蔵させる場合があります。 |
【酒造年度】 | 酒造りの世界では、毎年7月から翌6月までを1年とします。H13BYは、平成13酒造年度に出来たお酒、という事です。通常は前年度製造した清酒を出荷します。 |
【酵母】 | 清酒業界では酵母の品種改良が進んで、国や県の研究機関、大手メーカーなど で開発が進み、徐々に実用化されつつあり、香りの良いものや、ワイン風の清 酒が市販されはじめています。特に品評会などでは、香りが高い酵母で作られた清酒が上位入賞をはたすようになってきました。 |
【鑑評会】 | 鑑評会は毎年、期間内に製造された清酒の品質を鑑評することで品質と技術の現状を把握し、さらに優れた清酒の製造に寄与することを目的に開催されており、各地の国税局が主催するものと、酒類総合研究所主催の新酒鑑評会(全国規模で公的機関が主催するものでは唯一)とがあります。神奈川県が参加できる「関東信越国税局・酒類鑑評会」は平成11年までは春と秋の年2回行われていましたが、平成12年は春1回のみ開催。平成13年は春・秋2回。平成14年からは、秋の1回だけの開催です。また、年1回開催されている「全国新酒鑑評会」は、2001年度より国税局醸造研究所が行政特殊法人化され、独立行政法人・酒類総合研究所の主催に変更になりました。 |
酒税法上の分類方法が生まれるまでの歴史を先に説明しておきます。 |
||
【合成清酒とは】 酒税法では「清酒に類似するもの」と規定されており、清酒とは異なります。合成清酒は、アルコールまたは焼酎に、「香味液」と称する清酒や、糖類、有機酸類、アミノ酸類などの調味料、食塩、グリセリン、色素などさまざまな物を混合して製造した酒です。 添加できる原料は、天然物に由来する物質と食品添加物として認められている物質に限られます。清酒のもろみや酒粕、大豆蛋白質を分解して発酵させた液(KCP)など醸造物を混ぜて仕込んだり、砕米、白糠などを混合して、発酵させたりすることも行われています。 誕生は最もな理由があるし、現在も価格面などから根強いファンがいます。激安店では、清酒1升1000円弱のところ、合成清酒はその半額程度で買えてしまうのです。 しかし科学(化学?)から生まれた合成清酒は、清酒とは違いますし、米不足や戦争がなければ今に伝わるお酒にはならなかったと思っています。しかし、醸造技術発展への功績もあり、また合成清酒から大手に育った酒造メーカーも多々あります。 ではその歴史を説明したいと思います。 |
||
【混成酒と代用清酒】 明治24(1891)年、日本ではまだ造られていなかったアルコールが西欧から輸入されるようになり、このアルコールを調味料とともに清酒に添加した「混成酒」が造られていました。その後、大正にかけて、国内で甘藷や馬鈴薯など米以外の安価な原料を使ってアルコールの生産が開始され、これを混ぜた「代用清酒」や「改良清酒」も製造されましたが、酒税が高く、アルコールの輸入関税も引き上げられたため、長続きはしませんでした。 |
||
【合成清酒=理研酒 の誕生】 戦前の日本には、自国開発の技術を活かして相次いで誕生した企業群がありました。最盛期の1939年に63社を数えた「理研産業団」がそれです。 1918年に富山県から全国に波及した米騒動が開発のルーツだったようです。ビタミンB1の発見者として世界的に著名な故・鈴木梅太郎氏は、この事態に衝撃を受け、米不足を解消するには、当時、年間400万トンもの米を消費していた清酒の原料を米以外のものに切り換えるべきだと考えました。財団法人理化学研究所(1917年発足)第3代所長の大河内正敏氏も人口・食糧問題解決につながるものだとして、この開発・企業化を全面的にバックアップしたのです。 鈴木研究室の加藤正二氏らに指示して大正8(1919)年頃から合成清酒の研究に取りかかり、ブドウ糖の溶液にアラニンというアミノ酸を加え、酵母で発酵させると清酒のような芳香がすることを発見し、これにアルコール、調味料などを加え、清酒に似た飲料を完成させ、大正11(1922)年、この方法に特許がとられました。 その後、清酒中の成分を詳しく調べ、それらの成分を配合して、香り、味、色が清酒に似たものを造り出すという研究方針に変更され、これが現在の合成清酒の原型となりました。この合成酒は、理研が開発したというので「理研酒」と呼ばれ、大正12(1923)年には工場規模で製造されるようになったのです。様々な製造技術の開発が行われ、合成清酒の企業化も進んだのです。 |
||
【合成清酒の企業化】 理研酒の中間工場試験が1920年から静岡県大仁にある東洋醸造(後の旭化成→合同酒精)で開始されました。これに続いて大河内正敏氏は1921年、三共製薬の塩原又策氏、大日本醸造(清酒「白雪」の醸造元(現・小西酒造)が1920年に設立)の小西新右衛門氏と共同出資で、「大和醸造試験所」を設立、藤沢(神奈川県)で理研酒の試醸を進めました。 1923年には大日本醸造と大和醸造試験所が合併してスタートした「大和醸造」が、理研から理研酒の特許実施権を取得、「新進」のブランドで合成酒を販売しました。 しかし、このことが理研酒の普及・企業化の進展を阻害する要因ともなってしまいました。「理研自身が特許実施権を持たなければ理研酒の普及は困難だ」との大河内氏の考えもあって、特許実施許諾料の25%を大和に支払うことを条件として、1935年に特許実施権が理研の手に戻されました。 腐りにくく、二日酔いもせず、年に何回でも仕込みが可能で、従来の酒造設備がそのまま活用でき、しかも安いなどというメリットからか、全国各地の酒造会社で生産されました。1936年に理研が実施権の供与を始めてから、わずか7年後の43年には、植民地や占領地も含めて47社52工場で生産されるようになったのです。 この中には、大和醸造を吸収した三楽酒造(現・メルシャン)をはじめ、合同酒精や、戦後に協和発酵工業に吸収される兵庫県酒類などが含まれていました。また、理研自らの手による企業化も進められました。大河内氏は、1927年に理研の構内に理研酒のパイロット・プラントを作り、自らが会長となって同年設立した「理化学興業」を通じて、翌1928年から「利久」のブランドで発売しました。「国利栄久」、「利休」、「リキュール」などにひっかけて命名されたといいます。 利久の人気が高まるにつれ、「公益法人の理研が民業を圧迫している」との批判も出てきたため、1933年、理化学興業が生産・販売を一手に担当することになりました。1938年には、加藤正二氏を社長とする「理研酒工業」が設立され、理化学興業の合成酒部門を引き継ぎました。軍の監督工場に指定され、理研産業団の各社と同様、急速に戦時体制に組み込まれていきました。 戦後の1950年になって、理研発酵は「利久発酵工業」と改称され、イメージアップを図ろうとしましたが、合成酒業界の競争激化の中で経営が悪化、1955年には協和発酵工業に吸収合併されました。 |
||
【現在の合成清酒事情】 理研酒は今なお健在です。協和発酵は「利久」ブランドをそのまま残すとともに、他の銘柄も合わせて、年間7000klの合成酒を生産・販売しています。最大手の合同酒精、2位のメルシャンはもとより、東洋醸造を吸収した3位の旭化成工業(現・合同酒精)など各社も理研酒の流れを汲んでいます。 戦後の合成酒の年間需要は、1960年の13万7000klをピークとして、1975〜1991年まで2万kl台に低迷していましたが、バブル崩壊後、年々需要が回復しています。1996年以降は5万kl台にまでに回復しています。店頭の実勢価格で、通常の清酒に比べて3〜5割も安いうえ、淡麗でクセがない味が受けているようです。また調理用としても根強い需要があるようです。 |
||
(元禄美人:合同) (富久桜:メルシャン) (酒党萬来) |
||
【神奈川県でも合成清酒が作られていた!】
|