箱根の温泉について

古くから箱根の中心を形成していた7つの温泉:「箱根七湯」
1 箱根湯本 温泉が自然湧出する湯坂山の麓に広がる湯本温泉は、言わずと知れた老舗温泉街で箱根の玄関口。箱根七湯の中で最も古い温泉であり、738年開湯と伝えられている日本有数の温泉である。寛永2(1625)年に創業した老舗旅館・萬翠楼福住は、国の重要文化財(国指定有形文化財建造物)に指定されている。
2 塔之沢 今も現存する阿弥陀寺の開祖で、木食遊行僧として知られる弾誓上人によって、慶長10(1605)年に開湯と伝えられている。江戸時代以降に開けた温泉地なので「箱根七湯」の中では新しい湯治場。子宝の湯といわれていた。
3 宮ノ下 歴史は古い。戦国時代から底倉村と呼ばれていたこの地には、その時代から宮ノ下湯、底倉湯、堂ヶ島湯と呼ばれる三つの湯治場があった。大名の奥方や豪商たちの湯治場として栄えた古い温泉地だが、海外でも有名となったのは19世紀半ば以降。そして、明治11年に外国人専用の「富士屋ホテル」が開業されてからである。その富士屋ホテルは、当時の重厚な雰囲気をそのまま残していて、箱根のシンボルの一つにもなっている。
富士屋ホテルのライバル、宮ノ下の天保14(1843)年創業の老舗旅館「奈良屋」が、2001年その歴史に幕を閉じた。歴史ある箱根温泉でも、江戸時代から同族によって経営が続けられている旅館は、湯本の福住、塔之沢の一の湯、芦之湯の松坂屋、きのくにや、そして宮ノ下の奈良屋ぐらいであったのに残念だ。
4 堂ヶ島 歴史は古い。戦国時代から底倉村と呼ばれていたこの地には、その時代から堂ヶ島湯、宮ノ下湯、底倉湯と呼ばれる三つの湯治場があった。堂ヶ島には後醍醐天皇や足利尊氏などが帰依した臨済宗の高僧・夢想疎石(夢窓国師1275〜1351)がこの地に閑居を構えたと伝えられている。宮ノ下のバス停から、早川に向かう急な坂道と石段を下ると、眼下に大和屋ホテル、対星館の2つの旅館と吊橋が見えてくる。この谷間の秘境が堂ヶ島温泉である。
5 底倉
歴史は古い。戦国時代から底倉村と呼ばれていたこの地には、その時代から底倉湯、宮ノ下湯、堂ヶ島湯と呼ばれる三つの湯治場があった。宮ノ下交差点から国道138号線に向かって少し歩くと、蛇骨川の深い谷にかかる八千代橋が見えくる。その八千代橋手前から蛇骨川に沿った地域が底倉温泉である。蔦屋の前身である「そこくらの湯つたや」が有名。1590年、豊臣秀吉が将兵慰安のために作った「太閤の岩風呂」跡(左記)がある。
6 芦之湯 箱根山は山岳信仰が盛んなところだった。その麓、標高870メ−トルの高原に位置する芦之湯には古くから温泉が自然湧出していたので、鎌倉時代の弘安3(1280)年に、すでに行者達が湯治場として使っていたという記録が残っている。そして、寛文2(1662)年に勝間田清左衛門という人物がこの地を干拓し、現在の温泉場としての歴史が始まったと伝えられている。
7 木賀 底倉の隣で、八千代橋を渡ったすぐの地域です。現在営業している旅館は、公共の宿である「KKR宮の下」だけかと。
最近では、以下の温泉を加えて:「箱根十七湯」
8 大平台 塔之沢と宮ノ下の中間に位置する。箱根細工の産地として開けていたこの地に温泉が引かれたのは昭和26(1951)年。温泉を切望する住民達が資金を出し合い、宮ノ下から引き湯をして昭和26年(1951)年に念願の温泉場としての歴史が始まった。その後、懸命の採掘作業の結果、昭和38年に念願の温泉が湧出した。その当時出来た共同浴場が「姫の湯」である。また名水「姫の水」が有名。裏山の町営駐車場脇にある「仙元の泉」は自由に汲むことができる。
9 小涌谷 昔は噴煙が上がる荒涼とした地形であり小地獄と呼ばれていたが、明治6(1873)年、明治天皇が宮ノ下へ行幸を契機に、地獄というのは不吉であるとの理由で小涌谷と改名された。この地域はもともとは底倉村の共有地だったのだが、箱根への交通網が急速に発展し始めた明治10年代後半、横浜の実業家・榎本猪三郎らによって温泉場として開発され始めた。明治16(1883)年に榎本猪三郎・恭三親子が開業した三河屋旅館が有名。その旅館に隣接した「蓬莱園」は、榎本恭三が大正の初めに開いた庭園で、約2万坪の園内には約3万株40数種のツツジ、サツキが植えられ、5月中旬に開かれる「小涌谷つつじ祭」は毎年大勢の観光客で賑わう。また小涌谷といえば、「小涌園」と思い浮かぶ人も多いでしょう。藤田観光による1948年の箱根小涌園開業以降、小涌谷を大きく発展させてきた。水着で楽しむ日帰り温泉「ユネッサン」が人気スポット。
10 強羅 小学生の頃、何度かスケートしに行った記憶がある強羅は、明治27(1894)年、早雲山からの引き湯で温泉開発がはじまるまでは荒涼とした大草原だった。明治45(1912)年以降本格的な開発が始まり、大正3(1914)年に日本初のフランス式整型庭園の強羅公園が開園。大正8(1919)年には登山鉄道が強羅まで開通。ケーブルカーの開通と別荘地として発展した地である。
11 宮城野 宮城野は、大文字焼きで知られる明星ヶ岳とそれに続く明神ヶ岳の山すそに広がる集落。農業が主な産業だった宮城野が温泉地の一つに数えられるようになったのは、昭和30年代になってからである。昭和33(1958)年頃から木賀や強羅からの引き湯として温泉を利用し、昭和40(1965)年に明神ヶ岳の麓から温泉が湧出してからは保養所や寮が増えた。早川沿いの桜並木は有名。
12 二ノ平 小涌谷から強羅への道路沿いに位置し、昭和38(1963)年に温泉が湧出した新しい温泉地。共同浴場「亀の湯」でその湯を楽しめる。
13 仙石原 湿原だった仙石原には温泉が出ないため、元文元(1736)年、大涌谷からの引き湯で温泉場としての歴史が始まったが、本格的に温泉が利用され始めたのは明治時代に入ってから。上湯、下湯、元湯、俵石の4箇所で利用されだし、さらに昭和5年に箱根温泉供給(株)設立により発展した。
14 姥子 扇状地台地にある姥子温泉は、古くから眼病に効く温泉として知られている。秀名館が有名。足柄山の金太郎で有名な坂田金時が、傷ついた目を姥母に洗ってもらったという言い伝えから名付けられた。 
15 湯之花沢 芦之湯温泉から駒ヶ岳のケーブルカー乗り場へ向かう道筋にあるのが湯ノ花沢温泉。駒ヶ岳山腹にある湯ノ花沢は、神山と駒ヶ岳の両火山体を両側に臨む地形に位置するので、あちこちで小規模な噴煙を上げ自然湧泉がある。明治23(1890)年頃になるとこの自然湧泉が利用されるようになった。現在は自然湧泉は使われず、火山性水蒸気を温泉に変えて利用されている。
16 蛸川 駒ケ岳を背景に芦ノ湖畔の箱根神社北側から九頭龍神社近くまでに広がる一大リゾート、箱根園周辺が蛸川温泉であり、「箱根十七湯」の中で一番新しい温泉である。昭和62(1987)年、駒ヶ岳ロープウェー北側に温泉が噴出し、当初は「元箱根温泉」と名づけられたが、芦ノ湖温泉と区分けされ平成5(1993)年に「蛸川温泉」として箱根温泉の仲間入りをした。
17 芦ノ湖 芦ノ湖南端の元箱根から国道1号線沿いに関所を越えて箱根へとまたがる地域を芦ノ湖温泉と呼ぶ。この地には温泉は出なかったので、昭和41(1966)年に湯ノ花沢からの引き湯で温泉が誕生し、箱根で2番目に新しい温泉となった。
もう少し拡大して、「箱根二十湯」という
箱根二十湯
著者:平野富雄
出版社:神奈川新聞社
本体価格:950円
発行年月:1994年7月

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18 早雲山 強羅からのケーブルカー・早雲山駅周辺にある温泉。
19 大涌谷 箱根屈指の観光スポットの一つ。いまなお白煙をあげ続け、辺り一面に硫黄臭が漂っている。大涌谷の温泉利用は江戸時代からといわれていて、硫黄成分の作用によって肌がすべすべする。昭和5年に箱根温泉供給(株)が設立された。
20 湖尻 芦ノ湖の湖尻から姥子のあたりにかけて開発された温泉で、特に内臓関係にいいといわれている。


【元箱根温泉】
姥子温泉、蛸川温泉、芦ノ湖温泉の総称。


【蒸気井温泉(造成泉)】
温泉法施行後、「水蒸気その他のガス」も温泉とみなされたことによって、温泉と呼ばれている。箱根温泉郷では箱根温泉供給(株)の他、5つの蒸気井温泉事業所があるらしい。箱根温泉郷のホテル・旅館は約600軒あるが、200軒余りが蒸気井温泉の供給を受けており、それ以外の宿では、約300の源泉を分け合っているという。別府、那須でも同様な蒸気井温泉事業所があるそうだ。

箱根温泉供給(株):仙石原、強羅
昭和5(1930)年、大実業家・渋沢栄一氏らが、大涌谷を管理していた当時の宮内省に働きかけて設立した会社。大涌谷に噴出する蒸気(火山性ガス)と仙石原イタリ湿原にある数本の水井戸からの水によって製造された温泉と大涌谷で自然に湧き出る自噴温泉とを7対3でブレンドされた、蒸気井温泉である。1日の製造量は約4500トンで、入浴客3〜5千人をまかなえるという。ロープウェイから眺められるが圧巻である。(2008/7)

源泉名 仙石原温泉(大涌谷温泉)
泉質 硫酸塩泉・塩化物泉
(旧泉質表示名 酸性-含塩化土類石膏泉)
泉温 64.7℃
pH 2.9



箱根町町営温泉(箱根町蒸気井7号):芦ノ湖畔の箱根と元箱根地区
硫黄山噴気地帯で平成7年6月に掘削開始後、同年11月30日に完了し、噴気テスト後の翌年2月から温泉造成を開始。この蒸気井は蒸気温度摂氏138度、蒸気量12.7kg/毎秒及び熱量7,534Kcal/毎秒を有しており、1分間に約800リットルの温泉を造成し、旅館、寮及び個人等の179軒に給湯を行なっている。蒸気井は、昭和46年〜平成4年までに6本の掘削を行い温泉造成に使用していたが衰退し、現在はこの蒸気井7号のみの使用である。

源泉名 箱根町第7号蒸気井
泉質 単純硫黄温泉(硫化水素型)(旧泉質名 単純硫化水素泉)
泉温 77.0℃
pH 3.7
《禁忌症、適応症》
●一般的禁忌症(浴用) 急性疾患(特に熱のある場合)、活動性の結核、悪性腫瘍、重い心臓病、呼吸不全、腎不全、出血性疾患、高度の貧血、その他一般に病勢進行中の疾患、妊娠中(特に初期と末期)
●泉質別禁忌症(浴用) 皮膚、粘膜の過敏な人特に光線過敏症の人、高齢者の皮膚乾燥症
●一般的適応症(浴用) 神経痛、筋肉痛、関節痛、五十肩、運動麻痺、関節のこわばり、うちみ、くじき、慢性消火器病、痔疾、冷え性、病後回復期、疲労回復、健康増進
●泉質別適応症(浴用) 慢性皮膚病、慢性婦人病、きりきず、糖尿病、高血圧症、動脈硬化症


源泉名 箱根町揚湯2号泉
泉質 カルシウム・ナトリウム・マグネシウム一硫酸塩・炭酸水素塩泉(旧泉質名 含土類重曹-石膏泉)
泉温 66.4℃
pH 8.0
《禁忌症、適応症》
●一般的禁忌症(浴用) 急性疾患(特に熱のある場合)、活動性の結核、悪性腫瘍、重い心臓病、呼吸不全、腎不全、出血性疾患、高度の貧血、その他一般に病勢進行中の疾患、妊娠中(特に初期と末期)
●泉質別禁忌症(浴用) --------------
●一般的適応症(浴用) 神経痛、筋肉痛、関節痛、五十肩、運動麻痺、関節のこわばり、うちみ、くじき、慢性消火器病、痔疾、冷え性、病後回復期、疲労回復、健康増進
●泉質別適応症(浴用) 動脈硬化症、きりきず、やけど、慢性皮膚病


造成泉は他に早雲山系統などがある。左記は強羅公園から見た早雲地獄。